佐渡の金と採掘方法
佐渡でとれた金の種類は?
「佐渡島の金山」は、「目に見える金」である砂金がとれた西三川砂金山と、硬い鉱石の中にある「目に見えない金」がとれた相川鶴子金銀山の大きく2つのタイプの鉱山に分けることができます。世界では機械が使われていた時期に、それぞれの金の特徴に合わせて人力で金を採掘しました。

砂金鉱床(西三川砂金山)
砂金をとるために「大流し」という方法を使いました。山の土を掘り崩して川に落とし、人工的に作ったため池から一気に水を流し砂金を含んだ土砂を洗い流し、最後に川底に残り細かな粒となった金である砂金を集めます。

鉱脈鉱床(相川鶴子金銀山)
硬い岩盤にある金銀を含む石(鉱石)を掘っていきます。多くの金を得るために、採掘方法を工夫して鉱石を掘っていきました。黒いしまは銀黒と呼ばれ、金・銀が特に多く含まれています。
どうやって採掘していたの?
大流し(砂金鉱床)
水源から水を引き(a)、水を貯め(b)、採掘している場所に水を引き(c)、山の地層を掘り崩し(d)、不要な土砂交じりの水を流し去り(e)、砂金を採っていました(f)。

様々な採掘方法(鉱脈鉱床)
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露頭掘り:山の表面に出ている金や銀を含む鉱脈を土砂ごと掘りとる方法
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ひ追い掘り:山の表面に出ている鉱脈を追いかけて掘り進んでいく方法
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坑道掘り:あらかじめ鉱脈がどこにあるかを調べ、山の横から水平方向にトンネルを掘って、地中にある複数の鉱脈を同時に掘り進める方法

採掘するときに困ったことは何?
相川鶴子金銀山では、坑内の湧水や換気の問題が出てきましたが、掘削・測量技術のおかげで、採掘作業が効率よく進められるようになりました。

南沢疎水道
相川金銀山の坑内の湧水を外に出すために5年間かけて掘られた排水坑道です。全長約1kmの坑道は全て手作業で掘られました。現在も坑内の湧水を日本海へ流し続けています。

大切山間歩
この坑道の大きな特徴は、金を掘るための坑道に並行して、換気用の坑道が掘られていることです。2本の坑道を部分的に接続させて、空気の循環を良くする工夫がされています。
※間歩とは、鉱山で鉱石を取るために掘った穴のこと、坑道。
小判はどうやってできるの?
鉱石から小判がつくられるには、大きく分けて2つの工程(①鉱石から金を取り出す ②取り出した金を使って小判を作製する)がありました。佐渡の金銀山では、日本ですでに導入されていた技術をさらに発展させ、当時最先端の技術を使って小判を作っていました。
鉱石から金ができるまで
金銀を含む鉱石は、当時最先端の技術を使って、銀や不純物が取り除かれ、金だけを取り出していました。
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1 鉱石を 掘り 出す
( 採鉱) -
2 掘り 出した 鉱石を 金銀を 含む 部分とそうでない 部分に 分ける( 選鉱)
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3 鉱石を 細かく 砕き、 金を 取り 出す( 選鉱)
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4 鉛を 使って 金銀に 混じっている 不純物をとり 除く【 灰吹法】( 製錬)
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5 完成!【 焼金法】
金から佐渡小判ができるまで
取り出した金を溶して、のべ板状にして、小判の形に切り分け、模様をつけて、表面をきれいにして完成させます。佐渡の小判には佐渡の「佐」の字が刻まれました。
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1 溶かして、のべ 板状にする
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2 小判1 枚の 重さに 切り 分ける
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3 成形し、ござ 目というもようを 付ける。
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4 表面に 薬品を 塗って 熱を 加える
( 色揚げ) -
5 完成! 小判は 奉行所の 隣にあった「 小判所」でつくられました。
金のおもしろい特徴
金は、美しく光り輝き、錆びたり色が変わったりすることもほぼなく、加工も比較的楽にできます。また、世界全体でも量がとても少ないことから、古くからその価値が認められています。佐渡の金は小判として使われましたが、現代の生活の中でも金は身近な存在です。では、金の特徴とそれを生かした例を見ていきましょう。
特徴1)変化しない(錆びない・酸に溶けない)
空気や水に触れていても錆びたり色が変わったりすることもほぼありません。また、ほとんどの化学物質に反応しないので溶けたりもしません。※ただし、王水(濃塩酸と濃硝酸をまぜたもの)は金を溶かす数少ない液体の一つとして有名です。
特徴2)糸のように細くのばしたり、厚みを薄くすることができる
1グラムの金は、なんと約3,000mの長さまで細く伸ばすことができます。その際に金の太さは5ミクロン(ミクロン=1mmの1000分の1)となります。人間の髪の毛が60~80ミクロンですので、それよりもさらに細かいということです。また、1グラムの金を叩き続けると、薄く広がって1m四方位の大きさ(厚さ0.2ミクロン)まで広げることができます。金を薄くのばしたのが「金箔」と呼ばれるものです。
特徴3)熱が伝わりやすい、電気を通しやすい
この特徴を活かしてスマートフォンやパソコンなどの電気をよく通す必要のある部品(電子機器などの頭脳部分となる「半導体」の回路)などに使われています。
※参考:金を生み出す「都市鉱山」とは・・・使わなくなったスマートフォンなどの電子機器から、金などが使われている部品を溶かして再利用することができます。人間が作った様々な物から、金などの資源を回収してリサイクルすることを、鉱山を掘ることにたとえて「都市鉱山」と呼んでいます。日本は世界でもトップレベルの「都市鉱山」で、推定約6,800トンの金が眠っているといわれています。
特徴4)比重がとても大きい
金が他の物質より重い性質を利用して、砂金を含む土砂を入れた皿や板に水を入れてゆすると、砂金だけを集めることができます。
※比重:その物と同じ量(大きさ・体積)の水の重さを比べた時に、水よりも何倍重いかを比べたもの。